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超能力を持つ学生たちの青春を描くWeb小説『プラスチャイルド』のSSや設定などを公開しています。
制作:textscape

2013/03/16

+Cな日々 その8
(ひなた、任務中)

 一条ひなたは執行部のエースである。

 執行部とは、能力を悪用する生徒を取り締まる組織、『生徒会』の実働部隊だ。
 中でも検挙率がトップであったため、エースと呼ばれている。

 さらに文武両道で品行方正。
 どこかのアンダーポイントとは大違いだ。

+ + +

「隊長ッ!!」
「わかってる。違反者はこの辺りに潜んでいるはずだ。一条、周囲を警戒しろ」
「了解」

 ひなたが気を引き締め、さっと身構える。任務中だった。
 上司の剛山正尚や他の執行部と共に、現場へ出動している最中だ。

(今日の違反者はやたら反抗的ね。普通はあたし達がやってきたら降参するんだけど)

 今回、ひなたたちが追っているのは、念動力、またはサイコキネシスと呼ばれる能力を持つ者だ。
 この手の能力者を相手にすると、距離を取られるので苦労する。

『違反者の位置を捕捉したわ。一条さん、貴女の正面15メートルよ。そこから様子をうかがっている』

 インカムから、葉澄コウが情報を伝える。

「了解しました。直ちに……」
『待って……近くに固定されていない物が、たくさんあるわ。不用意に、接近したら危険よ』

 ひなたが、ギリと歯を噛みしめる。
 剛山に目配せすると、手を突き出して待てと合図された。

(これだから念動力って好きじゃないのよ)

 数秒間の沈黙の後、剛山が、部隊全員に指示を出す。

『お前ら、話は聞いていたな? オレと一条が囮になる。他のメンバーは、迂回して違反者の背後に回り込め……一条、問題ないな?』
「問題ないです」
「よし、オレの背後の回れ、いつもので行くぞ」
「了解しました」

 駆け寄ると、彼の背後に立つ。

「いつでも行けます」
「まずは、呼吸を整えろ」

 指摘されて、自分の息があがっていることに気づいた。
 違反者が、距離を置いて逃げ回るため、今回の出動は長丁場になっている。
 さすがのひなたも、疲れが出ていた。

「……もう大丈夫です」
「よし、行くぞ」

 剛山が、防御盾を構える。
 その背に隠れるように、彼女が身を屈めた。

「GOッ」

 二人同時に駆け出す。
 すぐに、防御盾に、なにかが打ちつけられる音がした。
 続けて数度、打撃音が響く。

(今ッ)

 その時、音が止んだ。

「『ゲット・レディ?』」

 セーフティースペルを口にした瞬間、ひなたの高速移動が発動した。
 剛山の背後から飛び出す。
 違反者の少年は、真正面にいた。
 そのまま加速して、一気に距離を詰めようとする。

 剛山が叫んだ。

「一条!」

 横から、鉄パイプが飛んできた。
 それを紙一重で回避する。
 鉄パイプは、そのまま反対側のビルの窓ガラスを粉々にした。

「まだだ、来るぞ!」

 粉々になったガラス片が、ひなたを目がけて飛んできた。

(念動力でガラスを? まったく、小賢しいわねッ!!)

 迫り来る、数々のガラス片を凝視し、息を止める。

 その体に、鋭利な凶器が降り注ぐ寸前……彼女が消えた。

(全部、かわすわッ)

 十数のガラス片を、加速と最小限の動きで回避してみせた。
 ガラス片が地面や壁に当たって砕け散る。

「違反者、確保ッ」

 振り向くと、迂回してきた同僚達によって、違反者が取り押さえられていた。
 ひなたが、注意を引きつけたおかげだろう。

 防御盾を抱えた剛山が側にやってくる。

「一瞬、ヒヤっとしたぜ」

 彼が安堵の表情を浮かべた。

「あら、あんなの朝飯前よ」
「……チッ、言いやがる」

 直後に、二人は小さく笑った。


 その後、違反者の搬送手続きをしたり、出動報告を情報分析班とまとめるなどして時間が過ぎた。
 自宅に戻る頃には、日が落ちて、あたりは暗くなっていた。

 玄関の前で、はあ、とため息をつく。
 帰宅したと思ったら、疲れがどっと襲ってきた。
 今日の任務はいつもよりハードだった。

 ドアを開けて中に入る。

「ただいま」

 すると、ひとりの少年が出迎えにきた。

「おかえり、ひなた」

 彼が、満面の笑みを向ける。

「アイス買ってあるから、後で一緒に食べない?」
「あ、うん……ご飯を食べてからね」

 その笑顔を見ていると、疲れがスッと消えていくのを感じた。

+ + +

 一条ひなたは執行部のエースである。
 現在、アンダーポイントの風澤望と二人暮らしをしている。

作:津上蒼詞