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超能力を持つ学生たちの青春を描くWeb小説『プラスチャイルド』のSSや設定などを公開しています。
制作:textscape

2013/03/10

+Cな日々 その5
(夕暮れどきの研究地区)

 風澤望はアンダーポイントである。
 最近、織戸神那子というメル友ができた。

+ + +

 二人は超能力総合研究施設セントラル・タワーの一室にいる。

「すみません」

 突然、彼女が謝ってきた。

「どうしたの?」
「せっかく、セントラルまで来ていただいたのに……」

 望は桐島麗子の個人的研究のため、月に何度かセントラルに足を運んでいる。
 その連絡役をしているのが織戸だった。

 今日は桐島の予定が合わず、セントラルまで足を運んだがそのまま帰宅することになった。
 彼女が、すみませんと謝ったのはそんな経緯からだ。

「仕方ないよ、それに織戸さんのせいじゃないし」
「ですが、私は望さんとの連絡役ですので……」

 織戸が下をむく。
 それを見た望は、うーん、と頭上を見上げた。

「ねえ、織戸さん。この後って時間ある?」
「はい、今日の予定は終わりましたので」
「それじゃあ、一緒に晩ご飯を食べに行こう。それで後腐れなし……だめかな?」
「いえ、そんなことは……少し待ってください」

 学生証を取り出すとどこかに連絡を取る。彼女は最重要能力者だ。予定にない行動を取る際は、こうして確認を取らなければならない。

「はい、よろしくお願いします……望さん、了承が得られました。一緒に食べに行ってもいいそうです」
「よかった。それじゃあ、どこに行こうかな……」
「セントラルの中にも食事をする場所はありますが、外にもあります。どちらにしますか?」
「僕は外がいいな」
「わかりました。私が案内します」

 その後、セントラルを出た二人は、夕暮れの研究地区を並んで歩く。
 建物の外観から明るい雰囲気の学生地区と比べ、研究地区の建築物は、ガラス張りであったり、全体的に灰色である場合が多く、落ち着いた雰囲気がある。ほとんどが高層ビルで、摩天楼のような街並みだ。

 夕焼け色の街中を、二人がゆっくりと進んでいく。

「みんなオレンジ色だね」
「もう少しするともっと綺麗になりますよ」
「もっと?」

 その時、街頭やビルのライトが点灯し始めた。

「うわあ、本当だ。もっと綺麗になったね」
「これから日が沈むまでの短い間、研究地区の景観は驚くほど変わります。私はこの時間帯が一番好きです」

 彼女の言う通り、徐々に高層ビルの外壁がオレンジ色から夕闇の色に変わっていく。

「晩ご飯、遅らせてもいい?」

 望がセントラル・タワーを見つめながら聞いた。

「織戸さんが好きな景色、一緒に見たいな」
「……はい、かまいません」

 織戸の頬に赤みがさす。
 それは夕日によるものか、別の何かによるものなのか、その表情からは読みとれない。

 二人で停留所のベンチに座り、変わっていく研究地区を眺めた。
 黄昏が、静かに、ゆっくりと夕闇へ変わっていく。
 どこか寂しげだが、美しい光景だった。

 次第に街灯やビルの照明が灯り始める。
 赤や黄色のライトが宝石のように見えた。
 空でも星々が散りばめられた宝石のように瞬く。

「……望さん」
「何? 織戸さん」
「もう日は沈んでしまいましたよ」
「そうだね」
「夕食はどうしますか?」
「うん……もう少しだけ、こうしていない?」
「……わかりました」

 寄り添う二つの人影は、もうしばらくそのままでいた。

+ + +

 風澤望はアンダーポイントである。
 そして織戸にとって特別な存在だった。

作:津上蒼詞