最近、織戸神那子というメル友ができた。
+ + +
二人は超能力総合研究施設セントラル・タワーの一室にいる。
「すみません」
突然、彼女が謝ってきた。
「どうしたの?」
「せっかく、セントラルまで来ていただいたのに……」
望は桐島麗子の個人的研究のため、月に何度かセントラルに足を運んでいる。
その連絡役をしているのが織戸だった。
今日は桐島の予定が合わず、セントラルまで足を運んだがそのまま帰宅することになった。
彼女が、すみませんと謝ったのはそんな経緯からだ。
「仕方ないよ、それに織戸さんのせいじゃないし」
「ですが、私は望さんとの連絡役ですので……」
織戸が下をむく。
それを見た望は、うーん、と頭上を見上げた。
「ねえ、織戸さん。この後って時間ある?」
「はい、今日の予定は終わりましたので」
「それじゃあ、一緒に晩ご飯を食べに行こう。それで後腐れなし……だめかな?」
「いえ、そんなことは……少し待ってください」
学生証を取り出すとどこかに連絡を取る。彼女は最重要能力者だ。予定にない行動を取る際は、こうして確認を取らなければならない。
「はい、よろしくお願いします……望さん、了承が得られました。一緒に食べに行ってもいいそうです」
「よかった。それじゃあ、どこに行こうかな……」
「セントラルの中にも食事をする場所はありますが、外にもあります。どちらにしますか?」
「僕は外がいいな」
「わかりました。私が案内します」
その後、セントラルを出た二人は、夕暮れの研究地区を並んで歩く。
建物の外観から明るい雰囲気の学生地区と比べ、研究地区の建築物は、ガラス張りであったり、全体的に灰色である場合が多く、落ち着いた雰囲気がある。ほとんどが高層ビルで、摩天楼のような街並みだ。
夕焼け色の街中を、二人がゆっくりと進んでいく。
「みんなオレンジ色だね」
「もう少しするともっと綺麗になりますよ」
「もっと?」
その時、街頭やビルのライトが点灯し始めた。
「うわあ、本当だ。もっと綺麗になったね」
「これから日が沈むまでの短い間、研究地区の景観は驚くほど変わります。私はこの時間帯が一番好きです」
彼女の言う通り、徐々に高層ビルの外壁がオレンジ色から夕闇の色に変わっていく。
「晩ご飯、遅らせてもいい?」
望がセントラル・タワーを見つめながら聞いた。
「織戸さんが好きな景色、一緒に見たいな」
「……はい、かまいません」
織戸の頬に赤みがさす。
それは夕日によるものか、別の何かによるものなのか、その表情からは読みとれない。
二人で停留所のベンチに座り、変わっていく研究地区を眺めた。
黄昏が、静かに、ゆっくりと夕闇へ変わっていく。
どこか寂しげだが、美しい光景だった。
次第に街灯やビルの照明が灯り始める。
赤や黄色のライトが宝石のように見えた。
空でも星々が散りばめられた宝石のように瞬く。
「……望さん」
「何? 織戸さん」
「もう日は沈んでしまいましたよ」
「そうだね」
「夕食はどうしますか?」
「うん……もう少しだけ、こうしていない?」
「……わかりました」
寄り添う二つの人影は、もうしばらくそのままでいた。
+ + +
風澤望はアンダーポイントである。
そして織戸にとって特別な存在だった。
作:津上蒼詞