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超能力を持つ学生たちの青春を描くWeb小説『プラスチャイルド』のSSや設定などを公開しています。
制作:textscape

2013/08/09

+Cな日々 その25
(休み時間の望たち)

「望、ノーボーダーズが出した新しいアルバム、聴いた?」

 ニ時限目の休み時間。鳴島隆人が学生証を操作しながら、風澤望に聞いた。

「リーチ・ユア・マインドでしょ? 聞いた、聞いた。今回のアルバムもよかったよね」

 望が笑顔で答える。すると、小柄な少年が2人の話に入ってきた。

「ノーボーダーズの話? ぼくも大好きだよ」
「翔太郎も?」
「とうぜんでしょ!」

 小柄な少年・三浦翔太郎は、声を弾ませながら答えた。
 3人がノーボーダーズの話で盛り上がっていると、熊谷冬弥が大柄な体を揺らしながらやってきた。

「ノーボーダーズの話ならオレも加えろよ」

 さらには、大きなヘッドホンを首から下げた、吉田和基まで話に加わってくる。

「……ノーボーダーズ? 音楽の話か?」

 望、隆人、翔太郎、熊谷、和基の5人は友人同士だ。1年C組ではアンダーポイント五人組とも呼ばれている。
 休み時間にもなると教室の一角に集まり、5人で話し込んだり、バカ騒ぎをするのだ。
 今日もまた、こうして5人のおしゃべりがはじまる。
 話題を切り出したのは隆人だった。

「それじゃあ、お前ら。ノーボーダーズで好きな曲はどれだよ?」

 真っ先に答えたのは翔太郎だった。

「ぼくはサマーバケーションかな?」
「いいねえ、サマーバケーション。ドライブ中に聞きたい曲だよな。俺、免許もってないけど……で、熊谷は?」

 続けざまに、隆人が熊谷に質問した。

「俺は、ロングノーズ・ショートデッキかな?」
「ああー、わかる。わかる」
「チョイスが熊谷っぽい」
「それじゃあ、和基の好きな曲は?」

 和基は少しだけうつむき、それから静かに答えた。

「……ハイパフォーマンス」
「さすが和基。選曲が渋い」
「音楽通だね」
「……そうか?」
「次は望だな、お前の好きなノーボーダーズの曲はなんなんだ?」

 望は、待ってました、とばかりに即答した。

「僕は、ビューティフル・マインド」
「望もなのか? 俺も同じだぜ。やっぱ、ビューティフル・マインドだよな」

 そう言うと、隆人はうれしそうな顔で学生証のディスプレイに触れた。
 すると彼が学生証にダウンロードしていたビューティフル・マインドが大音量で流れはじめる。
 とうぜん、他のクラスメイトたちは怪訝な顔をした。しかし、隆人は気にも止めずに、イントロに合わせて頭を上下に揺らしはじめる。
 そんな彼を見て、4人は苦笑いを浮かべた。

 だが、お気に入りの曲を聞き、気分をよくした隆人は、さらに大胆な行動にでた。
 突然、イスから立ち上がると、大声で叫んだのだ。

「Alright, You can open your eyes.
You can see, so beautiful world in front of you.
(訳:さあ、目を開けてごらん。君の前には、素晴らしく美しい世界が広がっているから。)」

 それは歌詞だった。隆人がビューティブル・マインドを歌いだしてしまったのだ。
 これには、望たちも頭を抱えてしまう。

「No matter what anyone says.
In this world, there are things that never change.
There are beautiful things that never change.
(訳:誰がなにをいっても変わらないモノがある。いつの時代も変わらない美しいモノがある。)」

 友人たちやクラスメイトが呆れている中、隆人はひとりで歌い続ける。
 周りの反応など、気にしていないようだった。むしろ、本人の顔は、楽しそうな表情が浮かんでいる。

「Who's said to you?
This world is dirty, there is no value.
(訳:この世界が、価値のない薄汚れたモノである、だなんて誰がいいやがったんだ。)」

 すると翔太郎がため息をつき、イスから立ち上がった……そして彼は、おもむろに低音パートを歌いだした。

「Why should you feel down?
Let's go forward!
(訳:落ち込んでいるなら顔を上げるんだ。)」

 隆人と翔太郎は、一瞬だけ目を合わせる。お互いの意思疎通は、それだけで充分だった。
 きれいにハモった2人の歌声が教室に響く。

「Okey, You can open your eyes.
(訳:さあ、目を開けてごらん。君の前には、素晴らしく美しい世界が広がっているから。)」

 今度は、和基がしぶしぶ立ち上がる。
 彼は曲に合わせてギターをひているジェスチャーで、2人の歌に加わった。

「Anytime you are, Close to the something lovable.
Anytime you are, Close to the someone to love you.
(訳:いつだって君が愛すべきモノはすぐ近くにあって、君を愛してくれる人はすぐそばにいる。)」

 熊谷は座ったままだったが、リズミカルに足を踏み鳴らし、ドラムを叩く動作を始める。

「The moment you were decided.
Your world is change so beautifully.
(訳:その気にさえなれば、この世界は一瞬にして、素晴らしく美しい世界になるんだ。)」

 望の方は、どうしたものかと4人を見つめていた。
 すると隆人が、彼の腕をつかんでイスから立ち上がらせる。
 そして歌いながら、身振り手振りで「ボーカルを交代するぞ」と伝えてきた。

「え、ちょっと、ま……
 Maybe you will notice.
 You're a part of the perfection.
(訳:そして気づくのさ。君もこの素晴らしく美しい世界の一員であることを。)」

 隆人は望にボーカルを任せると、翔太郎と一緒に低音パートに加わる。

「You're the perfection of beauty.
(訳:君自身が、素晴らしく美しい人なんだってことを)」

 望たちの歌声が、休み時間の教室に響く。
 はじめは不快感を表していたクラスメイトたちも、ここまでやられては笑うしかなかった。

「Alright, You can open your eyes.
You can see, Wonderfully Beautiful world in front of you.
(訳:さあ、目を開けてごらん。君の前には、素晴らしく美しい世界が広がっているから)」

 学生証から流れていた音楽が止む。

 曲が終わると、5人はハイタッチで達成感をあらわした。それぞれの顔には、楽しそうな笑みが浮かべている。
 最後までやりきった彼らに、クラスメイトたちからも拍手が送られた。
 感心している者もいれば呆れている者も大勢いたが、5人には、暖かい拍手が送られた。

 休み時間のひととき。1年C組は、心地よい一体感で包まれていた。

 ……が、運悪く。そこに一条ひなたがやってきた。
 彼女にとって、その光景はいつものように5人がバカ騒ぎをしているようにしか見えない。

「望ッ!! あなた、また騒いでいるのッ」

 とうぜん、望は注意される。

「え、いや。これは……違う、わけじゃないけど」

 しかし、うまく説明ができない。だいいち、「バカ騒ぎ」という意味では間違っていない。

「今日という今日は、ちゃんとお灸をすえてやるわッ」
「ええぇッ」

 教室に、望の情けない声が響き渡った。


作:津上蒼詞
訳:task