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超能力を持つ学生たちの青春を描くWeb小説『プラスチャイルド』のSSや設定などを公開しています。
制作:textscape

2013/08/16

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ショッピングモール

 シティプラザ・アクアは、学生地区にあるショッピングモールだ。その規模から、結波市でも代表的な商業施設となっている。

 オーシャンライン(沿岸線)のシティプラザ駅が敷地内にあるため、大都市の駅ビルに近い感覚で捉えてもらえれば間違いないだろう。

 50階建ての学生寮が立ち並ぶ結波市では、32階建てのシティプラザは低い建物という印象を受けるかもしれない。だが、ショッピングモールとしては32階は高層建築に入るだろう。敷地面積も、国内の大型百貨店と比べれば、倍以上の広さがある。

 アクアの名称からもわかる通り、アクアリウム社の傘下にあるアクアリウム・リテイリングが運営する商業施設だ。

 アクアリウム・リテイリングは、様々な革新的販売戦略によって、めざましい発展を遂げた企業なのはよく知られている。このシティプラザ・アクアも、小売業界に革新をもたらしたもののひとつだ。

 若者向けブランドやキャラクター商品などの新製品は、結波市や国内の高度政令都市にて大々的にマーケティング、販売を行うのは、今やどこの企業も行っている販売戦略だ。それをはじめて行ったのがアクアリウム・リテイリングであり、シティプラザ・アクアだった。

 超能力者の教育、研究を行っている高度政令都市に大型ショッピングモールを建て、そこで学生たちをメインターゲットに事業を行う──今では当然のような気もするが、当時は「採算が合わない」と多くの企業が敬遠していた。

 高度政令都市に暮らしている学生たちは、ほとんどが寮生活を送っており、彼らの生活は親と国からの援助金によってまかなわれている。
 寮生活のため、家具や大物家電(テレビ、冷蔵庫、洗濯機)の購入は見込めない。また、国内外の高級ブランドを購入する経済力もないだろう。
 わざわざ出向かなくても購入ができる、ネットショッピングの存在も大きい。これは高度政令都市に限ったことではないのだが、高度政令都市においてはネット販売を利用する学生たちの数は顕著だった。

 そこでシティプラザ・アクア事業部は、モール内に様々な若者向けアミューズメント施設を併設する。映画館やスポーツ施設などの大きなものから、カラオケ、9ギア、Nスポットといったもので集客を行い、学生たちに『遊びに行く場所』という認識を持ってもらうことに力を注いだ。

 それ自体は目新しい経営戦略ではなかったが、予想を上回る驚異的な集客力を見せた。高度政令都市に暮らす学生たちには、このような放課後や休日に過ごす場所がなかったからだ。

 ここからシティプラザ・アクア事業部のショッピングモールの枠にとらわれない独自の運営がはじまる。学生たちに潜在的な客層があると判断した同社は、モール内に様々な施設を増やしていく。

 劇場、ライブハウス、レコーディングスタジオ(兼放送局)、アクセサリ工房、リサイクルショップ、ダンススクールや各芸術系教室などが、ひとつのショッピングモールに小売店と並んで軒を連ねている。

 また、ネオ・ユースカルチャーとも呼ばれる学生たちのファッションを取り入れたオリジナルブランドを立ち上げたり、学生情報誌『ねいてぃぶ』を発行する編集部を作ってしまう(後に、このねいてぃぶ編集部が、学生アーティストを全面的にバックアップするための音楽・芸能事務所「チャーミング・ブルー」の母体となる)。

 これらの経営戦略はどれもが成功を収めるが、意外にも大きな利益を生んだのが、施設内の商品やサービスを高度政令都市以外の場所で販売したことだった。

 現代の中高生によって生み出された商品は、多くの大人たちを驚かせ、たくさんの子どもたちを熱狂させた──それは、この本を読んでくださっている諸兄には、説明するまでもないでしょう。

 「まずは高度政令都市で、新商品を発表する」

 これが、新たな販売戦略が生まれた経緯というわけだ。


──斉藤正孝著『セレクトする。ビジネスの本質』より抜粋


作:昌和ロビンソン