シークレットマーカーは、ヒドゥンシンボルなどとも呼ばれ、主にテーマパークなどで目にすることのできる隠されたシンボル(マーク)のことだ。
不規則に、また目立たない場所に施されたそれらのシンボルは、人気アトラクションで順番待ちをしている客の目を楽しませたり、何度も訪れる来場客を飽きさせないために用意した運営側の「遊び心」だ。
日本最南端の高度政令都市である結波市にも、このシークレットマーカーが無数にあるのは有名な話だ。
この度、都市建設の当初から今現在まで、結波市の都市デザインに携わっている新進気鋭の建築家グループ「LBM(Lucky Blue Moon/ラッキーブルームーン)」の金田素矢氏とクリス・ローランド氏にインタビューをする機会をいただいた。
記者「今や世界的に有名な建築家グループLBMのお二人にインタビューできることを光栄に思います。なんと言ってもお二人はLBMをまとめる立場でありながら、今なお、第一線で活躍している」
金田「あはは、おだてたって、何もでませんよ」
クリス「そう言ってもらえるのは、私としても光栄なのですが、ひとつ訂正させてください」
記者「訂正ですか?」
金田「おいおい、やっぱりソレにこだわるの?」
クリス「悪いですが譲れません」
記者「すみません、気を悪くするような言い方でしたか?」
金田「いやいや、そうじゃないんですよ。単なるこだわり(笑)──僕たちLBMを『建築家グループ』とおっしゃったじゃないですか? まあ、世間ではそう呼ばれているんですけど、僕たちは、『建築家グループ』ではなくて、『建設技能者グループ』と自分たちは言っているんですよ。ほら、LBMに所属している人材は、建築家だけではなくて建設業全般の技術者や、新たな建材を開発している科学者もいる。デザイナーだけじゃなくて、技術者やその他の色々な人たちの協力があって、仕事ができている。みたいな意味合いですね。でも、あまり気にしなくていいですよ」
クリス「いや、重要だよ。建築家だけでは家は建たない」
金田「まったく、クリスは技術者畑出身だからな……もちろん、僕だってその気持ちは同じだよ」
記者「では記事には、この下りをちゃんと掲載するようにします。もちろん、LBMのことは『建設技能者グループ』と記載しますよ」
金田「それじゃあ、前書き(?)のところはあえて『建築家グループ』って書いておいて最後に訂正、みたいな感じにしてよ。おもしろいから」
記者「はあ……クリス氏はそれでよろしいのですか?」
クリス「うん、面白いから、ぜひそうして」
記者「あははは、わかりました。そうしましょう……さて、そろそろ本題に移らせてもらってもよろしいですか?」
金田「ごめんね。いきなり話が脱線しちゃった」
クリス「私、ちょっと反省(わざとらしく、うなだれるクリス氏)」
記者・金田「(笑)」
記者「では、結波市のシークレットマーカーについてお聞きしたいなと思います」
金田「あー、あれか」
クリス「私たちの間では、ヒドゥンアニマルと呼んでいましたね」
記者「学生地区がウサギ、アンダーポイント地区がネコ、研究地区がイヌでしたね。モチーフが動物だからヒドゥンアニマルですか」
金田「そう、わかりやすいでしょ? 隠された動物のマークだからヒドゥンアニマル」
記者「そうですね。でも、その名称は定着しませんでしたね」
金田「うん。公表しなかったから。ぜんぜん定着しなかった。でも、ほらシークレットマーカーは大々的に唄うと、シラケちゃうでしょ?」
クリス「面白くないのは却下、なので」
記者「お、さっそくクリス氏の『面白くないのは却下』が出ましたね。生で聞いたのははじめてです」
金田「僕は耳にタコができるほど聞いた。2018年頃は、それ毎日聞かされたよ」
クリス「うん、言ってた。そればっかり言ってた気がする」
記者「クリス氏が『面白くないのは却下』と言って、学生地区の海浜公園の設計を一からやりなおしたというのは、有名な話です。着工の一週間前に」
金田「あれは、すごかったー。周りのメンバーが青い顔してたよ。さすがの僕も、うそー、って感じだったもん」
クリス「でも、ちゃんと間に合わせたよ。あの一週間が、今までで一番、肉体的につらかった」
金田「一緒に手伝った僕もね」
クリス「今更だけど、ありがとう素矢。そして、あの時は、ごめんね」
金田「今更かよ(笑)……あ、また話しが逸れた。えーと、ヒドゥンアニマルについてだっけ?」
記者「はじめに、シークレットマーカーをやろうと言い出したのは、お二人なんですか?」
クリス「確か、私たちじゃないよね?」
金田「ケイトたちだよ。ケイトと円香のアイディアだった。ミーティングの時に突然、言い出したんだよね」
記者「その二人は、ケイト・コロノア氏と林円香氏ですか? 有名マルチデザイナーの?」
金田「そうだよ。あのコンビが生み出すデザインは、すごくチャーミングだ」
クリス「さらに彼女たちも、とびきりチャーミングな女性と付け加えておきます」
金田「二人が唐突に『この街は、子どもたちが暮らす街です。彼らがワクワクするような街にするべきです。彼らが好きになる街にするべきです』って言ったんだよね」
クリス「その場で採用しました。満場一致だったよね?」
金田「すばらしいアイディアだったからね。それから、地区でウサギ、ネコ、イヌとモチーフを変えようってことになって……」
クリス「数週間後には、ヒドゥンアニマルを色々なところに散りばめるようになった。あれは、本当に面白かった。施工を担当する人たちもノリノリで、アニマルたちを隠す場所を一緒に考えてくれた」
金田「そうそう、半分以上は現場の人が決めてくれたんだったかな? 彼らのアイディアは良かった。僕たちじゃ、思いも寄らないところに隠すんですよ」
記者「お二人の話しぶりを聞いているだけで、いかに楽しかったか、がわかる気がします」
金田「でも、ひとつだけ誤算があったんだよね」
クリス「うんうん(笑いながら何度もうなずく、クリス氏)」
金田「あんなに早く、子供たちがヒドゥンアニマルの存在に気づくとは思わなかった。一切公表しないでおいて、一年ぐらい後に、ふとしたきっかけで気づいて……ってのを考えていたんだけど」
クリス「第一期生の入学式前に、みんながアニマルを探してたからね。驚いちゃった」
── 中略 ──
記者「現在、ネット上には、生徒たちが発見したシークレットマーカーがまとめられたサイトなどありますが、あれで全部なんですか? まだ見つかっていない物もあるんでしょうか?」
(顔を見合わせる二人)
金田・クリス「それはナイショです(笑)」
今回は金田氏とクリス氏に結波市のシークレットマーカーについて話してもらいました。次回も二人のインタビューの続きになります。
次回は『建設技能者グループ LBM』が、いかにして都市建設事業を成し遂げたのか、その秘密に切り込んでいきたいと思います。(あのクリス氏が半狂乱になって暴れたなんて話が飛び出す、かも?)
──『月刊デザインC 増刊号』より抜粋
作:昌和ロビンソン