これによりテロ組織『セカンドリバティ』は、事実上消滅した。
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オペレーション・ラビットハント
我々が遂行した『オペレーション・ブロークンホーム』によって、メリーランド学園都市を壊滅状態へと追い込むことができた。
しかしながら作戦の最重要ターゲットであったイリーナ・アンダーソンの殺害には失敗してしまった。
『オペレーション・ラビットハント』は、逃亡したイリーナ・アンダーソンの殺害を確実なものとするために立案された暗殺計画である。
諜報班により、イリーナ・アンダーソンの所在は、日本の高度政令都市・結波市であることが判明した。
ターゲットは我々の目を欺くために身分を偽り、合衆国からの交換留学生として結波市に潜伏している。
結波市は超能力研究において、日米両国の協力関係を象徴しているような場所である。また、都市を挟むようにキャンプシュワブとキャンプハンセンがあり、合衆国側は迅速な対応をとることができるだろう。
合衆国はメリーランド学園都市が壊滅させられたばかりであるため、これまでにない強い緊張感を保っている。
当然、結波市の警備体制も厳重なものとなることが予想される。それと同時に、日本側からも警察、自衛隊、高都自警が強力なバックアップをしてくることは必至だと判断するべきだ。
この状況だけでも、今回の作戦は非常に困難なものである。だが、我々が最も注意しなければならないのはターゲットであるイリーナ・アンダーソン自身である。
『オペレーション・ブロークンホーム』において、メリーランド学園都市はあれだけ甚大な被害を出しながら、死傷者の数が驚くほど少なかった。
この件を調査した結果、我々はその原因はターゲットの強力なテレパシー能力によるものだと断定した。少なくとも相手側は、作戦が開始された直後に、テレパシー能力によって作戦の全容を把握していたはずだ。そうでなければ、あれほど効率的な避難と的確な妨害が行えるはずがない。
そのため『オペレーション・ラビットハント』は、ターゲットのテレパシー能力を考慮した計画となる。
参加するメンバーは、少数精鋭のエージェント、4~6人になる。これは前回の計画が、数百名規模の人員で行われたことにより、作戦開始の初期段階でターゲットに異常を察知されるという過ちを繰り返さないためである。
結波市の人口は50万人強だ。潜入したエージェントが4~6人であれば、ターゲットのテレパシー能力をもってしても作戦前に察知される可能性はないだろう。
念のために参加するエージェントは、前回の計画に関わっていない者とする。これは『マッピング』と呼ばれるテレパシー能力者やその他のESP能力者が行う、超能力を利用した個人識別方法に対処するためだ。
またエージェントは、従来の方法で潜入することはできない。
少人数で確実にターゲットを殺害するためには、エージェントがターゲットと接触する直前まで、彼らの存在を知られてはならないからだ。
そのため、潜入するエージェントは作戦当日まで入国せず、入国する際は薬物によって仮死状態になってもらう。その状態のまま、彼等は船の積み荷に混じって結波市へ輸送される。
これは、どんなに強力なテレパシー能力だろうと意識を失った者の精神を読みとることはできない、という特性を利用するためだ。
港に搬入された仮死状態のエージェントは、積み荷を運ぶようにとだけ指示された第三者によって、所定の場所へと移動される。
所定の場所についたエージェントは、作戦開始時刻の直前に覚醒し、速やかに任務にあたる。
ターゲットには1名の護衛がついているのが確認されているが、幸い、結波市では一般人が銃を所持することは許されていない。護衛は非武装であると考えられる。武装したエージェントたちにとっては、大きな脅威とはならないはずだ。
参加するエージェントのひとりは、場所が日本であることから日本国籍を持つ、タケオ・ハナギシが適任だと思われる。彼には、現場を指揮するエージェント・リーダーして任務にあたってもらう。
(中略)
以上の内容からもわかる通り、この計画は非常に困難な作戦となるだろう。
だがセカンド・スターティングコールを未然に防ぐためには、世界規模のテレパシー能力がこの世に存在しているのを許すわけにはいかない。
地球上に存在するクリーンな人類のために、我々はイリーナ・アンダーソンを抹消する必要があるのだ。
──超能力懐疑派・人類原理主義過激派組織『セカンドリバティ』から押収した機密データより抜粋
作:昌和ロビンソン