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超能力を持つ学生たちの青春を描くWeb小説『プラスチャイルド』のSSや設定などを公開しています。
制作:textscape

2014/04/11

+Cな日々 その42
(ショーウィンドー)

 イリーナ・アンダーソンは第二世代能力者である。
 さらに10歳で高校進学をはたすほどの秀才であり、その容姿からクラスでもアイドル的な存在だ。

 そんなイリーナに、最近、風澤望という『お兄ちゃん』ができた。

+ + +

「お兄ちゃんとお買いモノ~、お兄ちゃんとお買いモノ~」

 イリーナが望の隣を歩きながら、即席の歌を口ずさむ。
 それを聞いた望が照れ笑いを浮かべる。

「そんなにうれしいの? 買い物って言っても食材を買いに行くだけだよ?」

 イリーナは今日の昼休みに、夕食は望と一緒に食べる約束をした。それも外食ではなく、望とひなたが二人暮らしをしている部屋でだ。

 それから放課後になり、ひなたが料理の準備をしている間、二人は食材の買い出しに行くことになった。とはいえ、望一人でも、食材を買いに行くことはできる。イリーナがついてきたのは少女が一緒に行きたいとお願いしたからだ。

「うれしいよ。だってお兄ちゃんと一緒なんだもん!」

 イリーナは満面の笑みを浮かべると、望の右腕に抱きついてきた。そして、恋人同士がするように腕をからめる。
 10歳のイリーナと15歳の望では、かなり身長差があるため、腕を組もうとすると少し不格好になってしまう。しかし、そのおかげでいやらしさがなく、むしろ二人の様子は微笑ましく見えた。

 望も相手がイリーナなので、変に意識することなく優しく笑っていた。

 そんな二人とすれ違った学校帰りの女子生徒達は、少し離れてから「今の女の子、かわいかったね」と振り返ってイリーナと望の姿を見返す。

 その時、突然、イリーナが足を止めた。

「ちょっと待って、お兄ちゃん」

 するとイリーナは店先のショーウィンドーに目を向ける。そこには、望と腕を組んでいる自分の姿が映っていた。

「どうしたの?」

 望もショーウィンドーに視線を向けた。

 ショーウィンドーに映るイリーナは、長い金髪の青い瞳をした美少女だった。背格好も今年で10歳の女の子らしい、身長と体つきをしている。
 一方の望は、黒髪に黒い瞳、顔つきも日本人の少年だ。16歳になる彼とイリーナでは、体格差がかなりあった。

 イリーナは腕を組み直すと、さらに望の方へと体を寄せた。

「お兄ちゃん、どんな風に見える?」
「そうだねえ……仲が良い兄妹、かな?」
「えー、恋人同士じゃないの?」
「恋人同士ってのは、無理があるんじゃない?」

 望が苦笑いを浮かべる。
 ショーウィンドーに映る二人は、アメリカ人と日本人の差はあったが、望の言う通り『仲が良い兄妹』に見える。だが、二人の明らかな身長差によって恋人同士のようには見えなかった。

「やっぱり、そうだよね」

 イリーナもショーウィンドーに映る自分の姿を見て、残念そうにしていたが、すぐに笑顔で望を見上げた。

「でも、仲良しに見えるんだよね?」
「うん」
「それなら、いいよ! ほら、買い物に行こうよ」
「そうだね。ひなたを待たせちゃ悪い」

 そう言って、二人はショーウィンドーの前から歩きだした。
 去り際、イリーナはもう一度ショーウィンドーに映る自分と望に視線を向ける。

 その時、少女が小さくつぶやいた。

「数年後は同じ台詞を言わせないよ、お兄ちゃん」

 イリーナは、今までとは違う少しだけ大人びた笑みを浮かべた。

「ん? 今、何か言った?」
「うんん、何も言ってないよ。そんなことより、早く買って帰らないと、ひなたに怒られるよ」
「そうだね、急ごう」

 黒髪の兄と金髪の幼い妹が、夕暮れの通りを仲良く歩いていった。

+ + +

 イリーナ・アンダーソンは第二世代能力者である。
 今はまだ、お兄ちゃんにとっては幼い妹だが、数年後も同じだとは言い切れない。


作:津上蒼詞