そのため、結波市では独自の警察組織『結波高度政令都市自治警察(通称:高都自警)』が治安の維持にあたっている。
この様な特殊な環境であるため、結波市で起きた事件に対して、沖縄県警はおろか警察庁ですら、安易に介入できない。
高都自警の特徴として、対能力者部隊の『警邏隊』は有名だが、他にも『公安課』と呼ばれている部署がある。
その業務は違法研究、反社会的活動、カルト団体、テロリズム、超能力懐疑派、などに関わりのある事案に対して調査・情報収集結を行い、規約違反があれば取り締まりを行う。
主に結波市全体の治安維持にかかわる業務を行っている部署だ。
公安課に所属している職員は、その業務内容から身分を隠して捜査を行っている場合が多い。筆者が取材を行った公安課の職員は、同じ高都自警の警察官はもとより、セントラルの職員や臨時教師、運送業者や飲食店店員など、様々な身分で捜査を行った経験があると話してくれた。
公安課の秘匿性は特出しており、高都自警内部でも自分が公安課に属していることを公にしない職員が多いほどだ。
そのため、公安課を構成している正確な人数を知っているのは、公安課室長を含む数名の幹部だけだと言われている。
そして注目すべきなのは、公安課室長を勤めた人物が、後に警察庁長官や警視総監、警視庁公安部長、特命全権大使、防衛大臣や政務官など、日本の警察機構や国防関係のトップに就任している点だ。
さらに公安課室長に任命される人物も高都自警の組織中でも元警察庁関係者(俗にエリート官僚と呼ばれる者)から選ばれている。
この2つの点から、高都自警(公安課)と警察庁、防衛省、外務省には密接な関係があるのは明白だ。
これは高都自警の中でも、特別な権限を握っている公安課が、警察庁、防衛省、外務省の意向を反映した活動を行っている可能性を示している。
過去には、この件で結波市の都市運営委員会が警察庁へ抗議したこともあったが、公安課の警察庁や防衛省、外務省との繋がりは現在も続いている(とはいえ公安課は、これらの省庁と繋がりによって、自衛隊との連携や国内や海外での捜査・情報収集を円滑に行うことができている。腐敗や癒着と、一概に断言はできない)。
公安課の職員は、高都自警内部ではエリートとみなされているが、その中でも『外事部』と呼ばれている部署の職員は、最も優秀な人材が抜擢される。
結波市は高度政令都市の中でも、超能力研究の要となっている場所だ。当然、各国の様々な組織が結波市の動向に注目し、干渉しようとしてくる。
外事部は、そのような他国の勢力から結波市と日米両国の国益を守ることが任務だ。
守るべき対象は『高度政令都市』『能力者』『超能力研究』であり、捜査や取り締まるべき対象は『国際的に活動を行っている組織』または『過激派』と呼ばれているような組織である。
そのため、外事部は公安課の中でもさらに非常に大きな権限を持ち、海外での捜査・情報収集も行う(もちろん、海外での法的な捜査権は持っていないので、捜査・情報収集は秘密裏に行われている)。
彼らが受け持つ事案の多くは、都市の運営や日米の国益に直接影響を及ぼす可能性がある。そのため外事部の性質は公安課の中でも『攻勢的』だと言われている。
2023年に発生したエンシャル事件では、外事部の諜報活動によって事件が誘発されたと言われており、その結果、超能力懐疑派カルト教団エンシャルの幹部と構成員のほとんどが射殺・検挙された。
他にも、第三花富士丸事件やSR商工ビル人質立て籠もり事件、DSK社員亡命事件など、外事部が関与したと思われている事件は多数上げられが、いずれの事件も主犯とされている人物は、検挙の際や直後に死亡している。
そして外事部が関与した事案の中でも、この様に表沙汰になった事件は氷山の一角にすぎないはずだ。
──松原良太郎著『プロテクション~治安と国防~』より抜粋
作:昌和ロビンソン