高度政令都市で流行したアイテムは、能力者ではない少年少女達の間でも必ず流行する──この流れはファッションだけに限らず、その他の若者向けコンテンツの業界では常識になっている。
そんなネオユースカルチャーに新たな流れが生まれた。
その発端となったのがアクアスポーツのウィメンズシューズ『ハイスピードフェアリー』だ。
*アクアスポーツ ハイスピードフェアリー 2029年モデル
これまでのネオユースカルチャーは、高度政令都市に店舗を構えるブランドのアイテムを、そこで暮らしている能力者達が支持することによって生み出されてきた。
だがハイスピードフェアリーは「高速移動の日本記録保持者・一条ひなたモデルのスニーカー」と銘打ち、開発段階からヴァリエンティアが関わっている商品として売り出したのだ。
販売当時から、「一条ひなた」は超一流の能力者として、一般人でも一度は聞いたことがあるほど有名だった。高速移動によって目にも止まらぬ速さでトラックを駆け抜けていく映像は、見た者に強烈なインパクトを与える。さらに彼女が美少女でもあったため、一部では熱狂的なファンもいたぐらいだ。
数年前から、アクアスポーツが一条ひなたのために高速移動中に使用できるシューズを開発していたのは広く知られていた。
その技術をフィードバックして開発したのがハイスピードフェアリーだった。
高速移動という特殊な環境で培われたこのシューズは、有名能力者の名前を使ったファッションスニーカーではなく、これまでにない耐久性を持ちながら超軽量を実現し、確実なフィット感と優れたクッショニングを両立していた。
発売後、ハイスピードフェアリーはスニーカー愛用者と一条ひなたに憧れる十代の少女達を中心に人気を集める。
さらに人気アイドル「猫姫」や「ササハラアヤノ」「Girl's beat」のメンバーが、プライベートで使用していることが報じられると、ハイスピードフェアリーは爆発的な人気となった。
ハイスピードフェアリーの成功を受けて、アクアスポーツ以外のブランドも様々な「有名能力者モデル」のアイテムを開発し始める。
こうして、現在は品薄のため入手困難な、↑turn↓の「フォースエイジ」やCSpotの「トリプルリング」、キャンディ・チェックの「Lilian」などの大人気商品が誕生する。
ハイスピードフェアリーによって「有名能力者モデル」という新しいジャンルが生まれた。
──すいそう編集部『すいそうムック アートファイン2029.10』より抜粋
イラスト:ハッピーイエローダイヤモンド
作:昌和ロビンソン
