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超能力を持つ学生たちの青春を描くWeb小説『プラスチャイルド』のSSや設定などを公開しています。
制作:textscape

2014/10/10

+Cな日々 その54
(アンダーポイント5人組の活動)

 俺の名前は鳴島隆人。
 学生地区に住むアンダーポイントだ。

 クラスでは同じアンダーポイントのダチ4人と、ひと括りに『アンダーポイント5人組』と呼ばれている。まあ、この呼び名は個人的には気に入っている。なんだか愉快な連中って感じがするからな。

 ここでの生活は、女っ気はほとんど無いが楽しくやっているよ。

 とはいえ、ほとんど超能力が使えないアンダーポイントの俺達は、多くの能力者達が暮らしている学生地区じゃあ、マイノリティってことになるだろうな。

+ + +

 2時限目と3時限目の授業の間の休み時間。
 俺はID認証機能を持つモバイル端末『学生証』を取り出し、メールやSNSの確認をしていた。
 新着メールが1件、SNSの書き込みが複数件あったので、その場で返信や簡単な書き込みなどを行う。

 それが終わると、俺は学生証のディスプレイから目を離して何気なく本体を観察する。
 黒いボディに大きなタッチディスプレイ、ボタンは一つ。全体を覆っているケースは灰色で、お気に入りのステッカーがいくつか貼ってある。

 ガキの頃からコイツを使い、ここで生活しているせいか、普段はあまり感じないが俺達の生活環境は恵まれている。

 無償で使用できる学生証。
 ほぼ完璧な福祉サービス。
 豊富な娯楽サービス。
 俺達、ヴァリエンティア発祥の文化。

 夏休みや冬休みで実家に帰ると、結波市にあって実家の周辺に無いモノが多いことに驚かされる。そんな時に、俺達がいかに恵まれた環境で暮らしているのかを感じるのだ。

 ここでの暮らしは快適である。
 それに異を唱えるともりはない──表向きにはな!

 その時、アンダーポイント5人組の一人、熊谷冬弥が俺に声をかけてきた。

「隆人、A組とD組の奴らが来たぜ」

 廊下に目をむけると数人の男子生徒が集まっている。
 俺は学生証をポケットに突っ込むと、パンパンに膨れた学生鞄を手に取った。

+ + +

「爛丸は相変わらずのおっぱい星人だったね」
「このまま行くと、おっぱい星人からクラスチェンジして洋モノ好きになる可能性もあるな。あらかじめ用意しておくか」
「D組の灰塚は二次ばかり発注していたけど、灰塚はクラス全体を担当しているんだろ? D組は全員が二次好きなのか?」
「そうだな、念のためにいくつか二次以外のモノも渡しておこう」

 間もなく、休み時間が終わる頃。
 俺達は1年C組の教室に戻っていた。コソコソと話しているのは、さっきの会合についてだ。会話を聞けばだいたいわかると思うが、エロ本の取引についてだ。

 俺達はお互いが入手したエロ本をプールしている。
 まあ、現状は俺達、アンダーポイント5人組が調達する側で連中が受け取る側って感じだけどな。

 一般人が、こんなやり取りをしているなんて知ったら、ばかばかしいと思うかもしれない。

 エロ本なんてコンビニにいくらでも売っているし、エロ画像なんてインターネットに接続すれば、無限にディスプレイに表示できるじゃないか──結波市や他の高度政令都市で生活をしたことがないヤツならそう思うだろう。

 結波市や他の高度政令都市で暮らしているのは学生──つまり未成年者ばかりが住んでいるという特性から、アルコールやタバコ、そしてエロ関係のコンテンツは販売禁止になっている。
 学生証はインターネットに接続できるが、幾重にもフィルターがかけられエロ画像の閲覧なんてできない。外部からデータを持ち込んでも、それを不正データとして削除するシステムまで組み込まれている。

 それなら結波市の外で購入すればいいじゃないのか?
 と思うかもしれないが、それもダメだ。

 結波市で行われる売買は、Shellという電子マネーで行われている。
 学生は学生証の機能を介してshellで商品の購入などを行う。現金は一切持っていない。
 そして、この悪名高きShellは会計の度に必ず学生証のIDから購入者の年齢を確認する。未成年者販売禁止の商品出会った場合は支払い時にエラーが出る。コンビニのレジからネット通販の取引にいたるまで、全てでだ!

 これが男子高校生にとって何を意味しているのか?
 誰だって、少し考えればわかるだろう。

 これは死活問題だ! そこにアンダーポイントだとか高レベル能力者なんて関係ない。
 結波市に暮らしているほぼ全ての男達が抱えている問題であり、団結し協力するに足る問題だ!

 だから、俺達はこうして活動しているのだ。
 立ち上がれ、結波の漢達よ!
 体制への反旗を翻すのだ!
 さあ、拳を突き上げて『エロ万歳』と叫ぶのだ!

「……隆人……ちょっと、隆人ってば」

 親友の風澤望が俺の体を揺すった。

 ん? いつの間にか俺が高々と拳を上げている。どうしちまったんだ?
 それにすぐ近くに、学年でも1、2を争う美少女のひなたちゃんが怖い顔で立っている。

「え? な、なんだ?」

 この状況をわかりやすく説明してくれたのは、アンダーポイント5人組のクール担当兼貧乳好きの吉田和基だった。

「……お前、思っていることが口に出てたぞ」

 なるほど、よくわかった!

「アンダーポイント5人組! もうすぐ授業が始まるんだから静かにしなさいよッ!!」

 入学式当日から毎日聞いている、ひなたちゃんの怒鳴り声が響いた。

+ + +

 俺の名前は鳴島隆人。
 学生地区に暮らしているアンダーポイントだ。
 俺達は相手に金品を要求することはない。無償でエロ本を提供している。経験上、こうするとなにかと良い事があるからだ──なによりダチがすげえ増える!


作:津上蒼詞